末社七渡神社旧社殿に飾られていた白蛇の彫刻

年頭の御挨拶

富岡八幡宮宮司 富岡茂永

  平成13年の年頭に当り、皇室の弥栄と御国の平安、氏子崇敬者の皆様の御繁栄と御多幸を心よりお祈り申し上げます。
 さて、今年は辛巳の年に当ります。十二支というと現代ではすぐに十二の動物を連想しますが、これは後世当てはめられたもので、本来は12ヶ月の順を示す符号で、「巳」は方角では南南西、時刻では午前10時項を表すものです。また、巳に当てられた蛇はその成長過程で脱皮を繰り返すことから、洋の東西を問わず再生と長寿の象徴と考えられたり、手足がないのに木に登ったり、水面に巧みに泳いだりする姿から、昔から蛇は不思議な力を持っていると信じられてきました。
 そして蛇は水辺を好む生き物であることから、東アジアの稲作文化圏では蛇を水神の使いとも見なされてきました。当神社の境内に祀られている末社七渡神社(七渡弁天)も水を司る市杵島姫令をお祀りするお社で、弁天池の周りで白い蛇を見かけるといった話もしばしば聞かれます。
 「巳」の字にはいま一つ、「起きる」という意味があります。これは身を起こして立ち上がるというだけでなく、草木がすっかり伸びきって生い茂った状態、まさに生命力を蓄えてこれからの躍進に備える姿です。
 昨年は中部・九州地方での集中豪雨、山陰の大地震、三宅島の噴火など自然災害が次々と猛威を揮い、政治経済は混沌として厳しい不況が依然として続いておりますが、この「巳」の字を戴く今年こそは、日本の新たな躍進を願わずにはいられません。

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