特別寄稿

「家相学が教えるもの」

                日本易道学校            
                校長 讃井 天祥          
 家相といえば、鬼門や台所・トイレ・浴室などの位置を気にする人が多いようだが、それよりも大切なことは「採光」と「通風」である。
 陽当りや風通しが良くなければ、どんなに豪華で立派な家を建てても、部屋には湿度が充満し家人の健康にも支障を来たすようになってくる。
 わが国は梅雨時の平均湿度は北海道を除いて75%、高い日には80%以上にもなり大変蒸し暑く過ごしにくい。それというのも、湿度が暖気や寒気を吸収するという性質を持っているからである。

 かつて農村の住宅には、井戸や炊事場・トイレといったものが屋外に設けられていた。それは、住まいの湿度を少しでも低くしようとする工夫からであり、生活の知恵でもあったのである。
 わが国よりも湿度が高く、冬季の気温はかなり低い韓国の昔の住居は、熱効果を高める為、屋根が低かった。

 以上のように、湿度のもたらす弊害は少なくないのである。「憩の場」である住居が住みにくい原因の一つには、自然の環境をよく知らないからであり、自然の力を利用できていないからではないだろうか。
 家相学では、間取りよりも廊下の位置を重視する。何故ならば、廊下は家屋内部の道路であり部屋を区分する境界だからである。この境界は、それを挟む双方の対立を生じさせる作用があるからだ。
 江戸時代、徳川幕府は諸大名の幕府に対する謀反を封殺する為に、藩の内部に対立を惹起させるよう企てた。その手段の一つが、国家老と江戸家老の部屋を廊下によって分断するという方法であった。
 こんな話がある。ある大学の教授から「結婚して25年、妻と私の母親の仲はすこぶる良かったのだが、ごく最近からその仲が急に悪くなり妻は実家に帰ってしまった。思い当たることが無く、何が原因になっているのかを観て貰いたい」という相談を受けた。

 25年間も仲良くしてきた二人の仲が急に悪くなるということは性格上の問題ではない。そこで私は訊ねてみた。「お二人の仲が悪くなる直前に家の内部の改造をなさいませんでしたか」と。そうしたら、やはり改造していたのである。
 教授には中学3年になる男の子がいて、高校受験準備のために毎日塾に通っていて、帰りが遅くなることが多い為、玄関の側の部屋で寝ている母親が寝付かれない。そこで部屋を改造したのだという。

 A図からB図に目を移してもらいたい。A図では部屋の廊下による分断は見られないが、B図では部屋と部屋とが廊下によって分断されてしまっている。これが二人の不仲の原因になっているのである。
 納得された教授は「早速、元通りにします」とのことであった。
 それから暫くたったある日、その奥さんがお姑さんの手を牽きながら歩いておられるのを目にすることが出来、元通りに直されたことを知ったのである。

 つまり家相というものは、住む人の家族構成や職業によって異なるもので、万人共通の理想的な家相というものはないのである。健康で愉しい毎日が送れるような環境づくりの手助けをするのが、家相学なのである。
 家を造るに当ってのタブーは廊下以外にも数多くあるのだが、今回は紙面の都合上割愛させていただいた。

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