< 神社紹介 >

      あきはさんほんぐうあきはじんじゃ
   秋葉山本宮秋葉神社
   静岡県浜松市天竜区春野町
 
◎火産霊神◎
 秋葉山本宮秋葉神社は全国約400社を数える秋葉神社の総本宮で、火を司る火之迦具土大神をお祀りしています。大神は日本の国土をお生みになられた伊邪那岐大神、伊邪那美大神の御子神にあたられますが、母神である伊邪那美大神は迦具土大神をお生みになられた時に大火傷を負って亡くなられました。それを嘆き悲しんだ父神の伊邪那岐大神は我が御子である迦具土大神を十拳剣で斬られました。大きな悲劇といえますが、その後、迦具土大神のご遺体から農工業に関わる多くの神々がお生まれになられました。この逸話は火に対する怖れと恩恵の両面を伝えるものといえましょう。
 日本の神々は新たな生命を生み出す力である「産霊の力」を備えています。我々人類は古来より火を利用して多くの文物を生み出して来ました。こうして築き上げてきた文明は火産霊神とも称される迦具土大神の御神徳により支えられていると言えるでしょう。

 
◎秋葉信仰◎
 秋葉神社が鎮座する秋葉山(標高866m)は古来から、山そのものが神と仰がれ、御社殿の創建は和銅二年(709)と伝えられます。そして神道と仏教は同一であるとする神仏習合思想の影響を受けて、火乃迦具土大神は秋葉大権現と称され、火除の神として信仰を集めるよいになります。さらに秋葉大権現はいつしか天狗と結びつき、火事になると羽団扇を持って飛来し火を鎮めるという伝承も生まれました。江戸をはじめとする大都市では大火を最も恐れていたため、火除の天狗は民衆に大きく迎えられたのです。こうして各地には秋葉講が組織され秋葉街道は多くの参詣者で賑わいました。現在でも遠州(静岡県西部)三河(愛知県東部)地方に多く残されている常夜燈は秋葉講の人々が参詣路の道標または地域の火除けを祈って建てた祈りの象徴といえます。
 
◎三舞の神事◎
 秋葉神社の年間祭事でもっとも大きなお祭りは12月15・16日に行われる「秋葉の火まつり」です。特に16日午後10時より行われる「防火祭」は全国より多くの参詣者が集います。
 防火祭は「弓の舞」「剣の舞」「火の舞」の三つの舞を一子相伝の秘儀を受け継ぐ三人の神職が順次舞う神事です。
 先ず弓の舞は五穀豊穣を祈って東西南北天上に向かって次々に矢を放ち、次に剣の舞は、ニ振の剣によって罪穢を切り祓います。そして火の舞は、本殿の万年の御神灯から火を移した松明を振りかざして火難・水難・諸厄諸病を焼き祓うのです。
 火への畏敬から生まれたこの祭りの起源は奈良時代に遡るとされ、現在の三舞になったのは鎌倉時代からとされます。
 防火祭は最も強力な祓いとされる火の霊力によって罪穢を祓う神事であり、こうして秋葉山には清々しい新春が訪れるのです。