神代巫女のただ今神道勉強中! F

 
新米巫女の神代(かみしろ)巫女にとって、神社の世界はまだまだわからないことだらけ。神職(しんしょく)の佐藤さんの手助けで日々勉強中です!
 
神代 佐藤さん、もう年の瀬ですよ! 早いですねぇ。
佐藤 本当だね。年末恒例のお札配りも始まったしね。
神代 神職さんが氏子さんのお宅を一軒一軒訪ねて、新年のための新しい御神札(ごしんさつ)をお渡しする行事ですね。
佐藤 そう。ご家庭の御神札は一年に一度、年末年始に取り替えてもらうんだ。初詣の時に新しいものを受けていただいても構わないんだけど、本来は年内、大掃除の後にお祀(まつ)りするものだからね、12月のお札配りはそのためのものだよ。
神代 そういえば以前質問いただいたんですが、年内に御神札をお取り替えする場合、何日頃に行ったらいいんでしょうか。
佐藤 大掃除の後であればいつでも結構なんだけど、「二重苦(九)」とされる29日や、大晦日の31日は避けるものだと言うね。
神代 あ、「一夜飾り」というものですね!
佐藤 よく知っているね。これは注連(しめ)飾りや門松(かどまつ)、鏡餅なども同じだよ。
神代 そういえばお正月にはいろいろなものを飾りますよね。どうしてですか?
佐藤 すべて新しい年の神様……年神(としがみ)様をお迎えするために用意するんだよ。
神代 年の神様?
佐藤 うん。稲作を中心に生活してきた日本人は、年が改まると新しい稔(みの)りをもたらす神様がやって来ると信じてきたんだ。それが、年神様さ。年神様のお陰で新しい生命が育まれ、僕たちは豊かな生活を営むことが出来るんだよ。
神代 年神様という言葉は馴染みがないですけれど、私たちにとってとても大切な神様なんですね。
佐藤 そうだね。門松は、その年神様に来ていただくための目印だよ。そして注連飾りは、年神様をお迎えするその家が清浄であることを示しているんだ。
神代 だから門松は玄関口に、注連飾りは扉などに飾られるんですね。あ、それじゃあ鏡餅は、年神様へのお供え物ですか?

佐藤 正解! お米から作られるお餅は、そもそも神聖な食べ物とされていたんだ。それを鏡のように丸く美しく整えて、年神様に召し上がっていただく。すると鏡餅は年神様のお力を宿し、一層尊い食べ物となるんだよ。
神代 だからこそ、鏡開きをしてみんなでいただくことが、大切なんですね。
佐藤 そのとおりだよ。鏡餅は松(まつ)の内(うち)が終わる1月7日に下げて、11日にいただくのが習わしだね。その際、刃物を使わずに叩き割るのがポイントだよ。
神代 私はおしるこで食べるのが好きです!
佐藤 あはは、なるほど。ちなみに門松も注連飾りも、同じく1月7日に外すものとされているよ。もともとは15日の小正月までを「松の内」、つまり門松を飾る期間としていたようだけど、江戸時代に7日までと短く定まったそうなんだ。ただし関西では今でも15日までを松の内とする場合もあるようだし、一括りには出来ないけどね。
神代 私は7日に七草粥を食べると、お正月気分も一段落という気がするなぁ。
佐藤 そうだね。おせち料理も美味しいけれど、七草粥は体に優しくて心も温まるよね。一年の無病息災を願う食事だそうだよ。
神代 そうだ佐藤さん、外した注連飾り等はどうするものなんでしょう?
佐藤 地域によってはどんど焼きや左義長(さぎちょう)といって、1月15日などにその地域の行事としてお焚き上げしたりしてるね。もちろん神社でも、年間を通してお預かりできるよ。
神代 年神様のために用意したものだから、御守と同じく捨ててはいけないんですね。
佐藤 地方ごとに様々な特色はあるけれど、いずれにしてもお正月は日本人が古来もっとも大切にしてきた行事のひとつ。年神様をお迎えして、家族みんなが健やかであることを願う――門松や鏡餅をただ飾るだけじゃなくて、お正月にはそうした日本人の心を感じてもらいたいな。