神代巫女のただ今神道勉強中! N

 
新米巫女の神代(かみしろ)巫女にとって、神社の世界はまだまだわからないことだらけ。神職(しんしょく)の佐藤さんの手助けで日々勉強中です!
 
神代 佐藤さん、もういくつ寝るとお正月ですね!
佐藤 そうだね、皆さんに清々しくお詣りしていただけるよう、しっかり準備しておかないとね。神代さん、授与品の用意は万全かな?
神代 はい!そうだ佐藤さん、「吉事当り矢(きちじあたりや)、凶事祓い矢(きょうじはらいや)」ってどういう意味ですか?
佐藤 授与品のひとつ、白羽(しらは)の矢のご利益の説明だね。良い運を掴み、悪い運は遠ざける、という意味だよ。
神代 白羽の矢って、いわゆる破魔矢(はまや)のことですよね?
佐藤 うーん、形は同じだけど成り立ちが違うんだ。ハマヤは、現在「破魔矢」と書くよね。「魔を破る」というとても縁起のいい字だけど、実はこれは当て字なんだよ。
神代 えっ、そうなんですか!?
佐藤 ハマというのはそもそも、投げ上げたり転がしたりした円(まる)い的を、矢で射る競技の名前なんだよ。昔々は日本の各地で行われていた、よく知られた技くらべだったんだ。
神代 ハマ、難しそうですけど、面白そうです!
佐藤 やがてこの競技で使われる弓矢のことを、ハマ弓・ハマ矢と呼ぶようになってね。子供の成長を祈るおまじないの品として贈り物に使われるようになったんだよ。
神代 まっすぐに的を射抜く弓矢には、確かに特別なパワーがありそうですね。
佐藤 そうだね。そして後世「破魔矢」の字が当てられるようになり、神社の授与品として定着したんだ。
神代 なるほど。それじゃ、白羽の矢は?
佐藤 神代さん、富岡八幡宮のご創建の由来は知っているかな?
神代 えーっと、寛永(かんえい)4年(1627)に長盛(ちょうせい)というお坊さんの夢に八幡様が現れて、お告げをしたんですよね。江戸の永代島(えいたいじま)に神社を建てなさい、という……。
佐藤 そう、その時のお言葉が「わが宮居(みやい)せむところには白羽の矢たちたらん」。すなわち、「自分を祀るべきところには白羽の矢が立っている」というもの。そうして長盛さんは矢の立つ場所を探し当て、富岡八幡宮を創建したんだ。
神代 つまり白羽の矢は、富岡八幡宮のはじまりにちなんだ、特別な授与品なんですね!
佐藤 そのとおり。さらに、「白」は清浄を意味するよね。だから白い矢羽は、これが神様の御意志をいただいた清らかな矢であることを示しているんだ。
神代 言わば、神様の御心の象徴ですね!
佐藤 新しい一年のはじまり、ぜひ白羽の矢をご家庭にお祀りして、八幡様のお護りを身近に感じられる毎日を過ごしていただきたいな。