家族そろって静かに迎える新年。古来、日本人はお正月をことのほか大切に扱ってきました。しかし、最近は生活環境の変化からこのお正月の行事が忘れられてきています。私達の祖先は、お正月にどのような行事を行ってきたのでしょう? 新年風景として1番に思いつくのはやはり、門松と注連飾りでしょう。門松は常に青々としている松と竹を使います。これは地鎮祭などで見る、神様に降りていただく「神籬」と同じ意味を持ちます。注連飾りも「この家の中に年神様をお迎えしている」という意味の注連縄です。東京では6日の夜に外して7日に神社へ納めますし、地方によっては15日に「左義長」「どんと焼き」というお焚き上げ行事を行なったりします。また、これらの正月飾りは「一夜飾りをしない」とされ、大掃除の後から12月30日までに飾る習わしです。 年越し準備で1番楽しい思い出は餅つき・・・という方も多いでしょう。新年の神棚などに供える餅は、12月29日は「苦(九)がつく」といって餅つきをしません。同じように、この日に正月飾りを飾ることも忌まれます。こうしてお供えされた餅は、1月11日に鏡開きをします。この時、刃物を使わないのは江戸時代の武家の習慣が広まったものです。小槌などで割った餅はお汁粉などにしますが、これは神様のお下がりをいただき、家族の1年間の健康を祈る意味があります。 1月7日には七草粥を食べます。元日から7日までは「松の内」と呼び、新年のお祝い期間でした。この間は仕事を控え、縁起を担いだ保存食であるおせち料理を食べますが、七草粥を作ることで日常の生活が始まります。七草とはセリ・ナズナ・ゴギョウ・ハコベラ・ホトケノザ・スズナ(蕪)・スズシロ(大根)のことで、邪気を祓い万病を除くと言われますが、冬に不足しがちな新鮮な野菜と栄養を補充する面もあります。 新しい年を迎え、未来を見つめることも大切ですが、積み重ねられた歴史があってこその未来です。日本の伝統へも目を向ける。そんな一年も有意義ではないでしょうか。 |