本祭りに寄せて

古石場 細川照子  細川民族舞踊研究会氏子代表
 

 わっしょい!わっしょい!深川っ子の我家は本祭りともなれば、兄弟家族が皆集まって広くもない家は人で一杯になり、まこと賑やかさ溢れる家となる。久し振りに会う従兄弟、従姉妹との思い出話。そして尽きない祭りの話。

 夜明けと共にまつり太鼓が聞こえてくると、さあ出発!一団体を見送ると後は静けさが訪れ、ふっと子供の頃を思い出す。本祭りの朝は町会役員がお揃いの浅黄色の着物、上下をつけて神輿の前を歩み進む。八幡様の宮元神興を一番に各町会の様々な神輿が続き、そして神輿の前には深川芸者(辰巳芸者)の手古舞達。昔の手古舞の片肌ぬいだ着物の柄は今でもはっきり覚えている。鯉の滝のぼり、金刺銀刺の刺繍模様の素晴らしさ、その他、色とりどりの柄、たっつけ袴の手古舞姿は忘れられない祭りの思い出である。

 江戸三大祭りの中でも深川のお祭りは水かけ神興で有名だ。かって商工会議所創立記念の折、競技場で深川神興の天覧があった。昭和天皇の御前で、深川神興の勇ましい水かけと「わっしょい!」をご覧になった陛下が「あれは?」とお尋ねになられ、側近の方が「あれは深川の水かけ神輿と申しまして」と説明されたとの事。私達はその時マスゲームで出場していたが、陛下の御質問の事を伺い深川っ子の誇りを感じたものだ。

 また近年、鳳輦渡御にお供し氏子町内を巡る大役を受けた折にはまことに感激した。各町内をお供して巡った思い出は終生忘れられないだろう。門下生や家族と語りあう祭りの話はいつまでも尽きることがない深川八幡宮の本祭りである。
 

お祭りに華を添える細川さんと細川民族舞踊研究会の皆さん