神道の豆知識 
 地鎮祭について
 「お祭り」というと皆さんは、神社で行われる祭典やそれに伴う神輿渡御などを思い浮かべると思いますが、それだけではありません。もっと身近なところにも祭りはあります。それは建築にまつわる祭りです。中でも地鎮祭は最も身近と言えるでしょう。

 地鎮祭とは「とこしずめのまつり」とも呼ばれ、字のごとく「土地を鎮めるお祭り」です。建築工事や土木工事に先立ってその土地の産土神や建築を司る神様、地面を司る神様を祭るもので、工事が順調かつ安全であること、また完成後の安泰を祈願します。 一般では「地祭」「地曳」などと呼ばれることもあります。

 祭典は神職を招いて着工前のさら地で行ないます。神社でのお祭りと一番違う点は「神籬(ひもろぎ)」と呼ばれるものを使うことです。神籬には榊の枝を使い、紙垂を下げます。この枝を憑代として神々をお招きするのです。神社のように社殿がありませんから、このような形で神様をお祭りします。また同じ理由からお祭りの場所は四方に忌竹という笹を立て注連縄で囲い、その内側がお祭りのための清浄な場所であることを示すと共に、けがれが入り込まないようにします。

 地鎮祭の次第は次のとおりです。

  先ず  修祓(お祓い)
  次    降神
  次    献饌
  次   祝詞奏上
  次   四方祓の儀
  次   刈初・穿初の儀
  次   玉串拝礼
  次   撤饌
  次   昇神

 初めにお祭りの場と参列者を清め、神々をお招きします。その後ご神前に米・酒・海の幸・山の幸といったお供え物を差し上げます。そして神職が土地の安泰と工事の安全を祈願する祝詞を奏上します。

 ここまでは神社でのご祈祷や祭典とあまり変わりませんが、次の二つが建築に当たっての独特な行事となります。

 四方祓の儀は、敷地の四隅と中央を切麻や米、塩などで祓い清める行事です。これによって敷地を鎮め、四方から侵入する災いを除きます。次に刈初・穿初の儀を行ないます。雑草を刈り取り、地面を均すという土地の整備を象徴するもので、着工をあらわしています。祭典では実際の鎌・鍬・鋤といった刃物ではなく、白木で作られた忌鎌・忌鍬・忌鋤を用います。

 そしてご神前に玉串を差し上げて拝礼の後、お供え物を下げ、お招きした神々にお帰り頂き祭典を納めます。

 伊勢神宮では20年に1度、「式年遷宮」といってすべてのご社殿を新しく建て替える行事があります。この時にも地鎮祭は行なわれますが、伊勢神宮では「鎮地祭」と呼び、刈初・穿初の儀では「物忌(ものいみ)」と呼ばれる少女が儀式を執り行なうなど、古式が大切に守られています。

 皆さんが地鎮祭を行なうに当たっては、施工業者とよく相談して日取りを決めたほうが良いでしょう。また産土神をお招きするお祭りですから、どこの神社に頼んでも良いと言うものではありません。土地の氏神様に当たる神社にお願いしましょう。もし氏神様が判らない場合は、最寄の神社に尋ねてみてください。なお、地域によってお祭りの仕方が異なる場合もありますので、そのときは習慣に従って行なうほうが良いでしょう。

 地鎮祭は一生に一度、あるかないかの大きな行事です。また、古くから受け継がれてきた日本人の心を子供達に伝える大切な機会でもあります。真心を込めてお祭りを行ない、神様のご加護を頂きましょう。
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