< 神社紹介 >

      
   阿蘇神社
   熊本県阿蘇市
 
◎阿蘇大明神◎
 阿蘇神社の主祭神は健磐龍命で、初代天皇である神武天皇の御孫にあたります。神武天皇は九州の高千穂から出陣して大和に向かわれますが、その後、九州地方で反乱が勃発、その平定に遣わされたのが健磐龍命です。平定後、命は阿蘇地方の阿蘇都比当スと結婚、以後阿蘇地方の開拓に尽力され、地域の開発神、農耕神として仰がれることとなります。
 阿蘇神社はその御子である速瓶玉命によって創建された神社で、主祭神である健磐龍命を含め父神、妃神、子神など親族にあたる十二神の神々をお祀りしており、古くから阿蘇大明神と総称されています。
 また祭祀を継承している阿蘇家は健磐龍命の子孫にあたります。現在は第91代宮司阿蘇惟之氏が務められており、これは皇室、出雲大社の千家家と並んで最も古い家系の一つとして知られるところです。

 
◎阿蘇山◎
 阿蘇神社は我が国有数の活火山である阿蘇山の麓に鎮座します。七世紀前半に中国で編纂された『随書』には
  阿蘇山あり。その石、故なく火が起り天に接することがあれば人々は異変として祈り祭る
とあり、阿蘇山が古くから神として信仰されてきたことがうかがえます。
 特に火口内には神霊池とよばれる大きな水たまりがあり、その神秘的な水の増減は神のご神威とされて、都にも報告されました。そして神霊池は健磐龍命そのものとされ、命は地域の開発神・農耕神であるとともに国家における火山神、水神としての性格も合わせ持つようになりました。
火を噴き大地を揺らす活火は古来より絶大な力を持つ神として畏れ敬われたのです。
 
◎農耕祭事◎
 阿蘇神社とその周辺で行われる様々な農耕儀礼は「阿蘇の農耕祭事」として国の重要無形文化財に指定されています。
 古来より日本は稲作によって生活基盤を支えてきた国で、稲は日本人の主食にすべきものとして天照大御神より託されたものです。この大御神のお言葉に従って国民はもとより、天皇陛下自らも毎年稲作にたずさわられ新穀を神さまに捧げておられます。したがって神社の祭典も稲作と関連するものが多く、特に阿蘇神社の祭典は古代さながらの特殊神事を今に伝えるうえで貴重なものです。
 祭事は3月の田作祭、旧暦4月・7月の風祭、9月の田の実神事など稲の生育過程にあわせて様々奉仕されますが、特に盛大なのは7月28日におこなわれる御田植神幸式(おんだ祭)です。
 これは稲の育ち具合を神様にご覧頂く神事で、四基の神輿を中心に、猿田彦、14人の宇奈利(神様の食事を運ぶ女性)等々、200人に及ぶ行列が田園を進みます。途中二ヶ所の仮屋では、神職が神輿に稲の苗を投げる「御田植式」がおこなわれ、うまく苗が神輿の屋根に乗れば豊作と伝えられています。
 神輿を担ぐ駕輿丁が謡う悠長な御田歌とともに進む行列は、古代ののどかな祭りの情景を蘇らせます。