第11回琉球王国のグスク及び関連遺産群
 
 かつては琉球と呼ばれ、中南海貿易の要衝として栄えた最南端の県・沖縄。県内の世界遺産は、この地の独特の文化を伝えています。
 
祭政の拠点・グスク
 沖縄本島には、石垣で囲まれた「グスク」という遺跡が南部を中心に点在し、その数は二百を越えます。グスクには通常「城」の字が当てられ、各地域の有力者の居城であったとされますが、それだけの存在ではありませんでした。その内部にはたいてい「御嶽」という神々へ祈りを捧げる聖域があります。
 ちょうど氏神神社のようにそれぞれの土地を守る御嶽を祀り、民を治める。グスクは二つの「まつりごと」の場であったようです。
 世界遺産へは南部の首里城跡・中城城跡、北部の今帰仁城跡、中部の勝連城跡・座喜味城跡が登録されています。ほとんどのグスクは、風化や先の大戦による被害で内部構造が失われています。
 
祈りの場・御嶽
 先にも登場した「御嶽」は沖縄独特の信仰の場で、神々や祖霊が降臨する聖域のことです。かつては沖縄全島に六百箇所以上、村落ごとに御嶽があり、神道で言えば、村の鎮守様のような存在でした。またの名を「拝所」といいますが、その名の通り、今日でも各地の
御嶽には祈りを捧げる人の姿が絶えません。
 世界遺産である「斎場御嶽」は最大にして最高の御嶽で、琉球王国の巫女組織の長・聞得大君の就任の儀式が行われたり、国の重要な祈願がなされた場所でした。
 
琉球王国のおもかげ
 15世紀末から明治の廃藩置県まで続いた琉球王国の歴史を伝えるものとして、首里城とグスク跡(首里城跡)、玉陵、名庭・識名園が世界遺産となっています。
 那覇市街を見下ろす丘の上に、琉球王国の王城・首里城があります。青空に映える赤い建造物は、日中の文化が混ざり合った独特の様式をみせますが、これは平成四年に再建されたものです。首里城西側の玉陵は琉球王家・尚氏の陵墓です。岩の斜面をくりぬき轡型に築かれた形式は沖縄独特のもので、亀甲墓と呼ばれます。その形は女性の胎内を表し、再生への願いが込められているのです。
 首里城南方の識名園は王家の別荘で、沖縄随一の名園です。形式は池泉回遊式庭園。七千坪の広大な敷地には中国風の四阿もありますが、中国からの冊封使を歓待する目的から、心字池や石灯篭など日本的なものが取り入れられています。
 

「世界遺産」とは、1972年の国連教育科学文化機構(ユネスコ)総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(通称:世界遺産条約)に基づき、遺跡・景観・自然など、人類が共有すべき普遍的な価値を持つと認められたもののこと。世界各地に、現在700件を超える物件が登録されています。