◎創祀◎
 出石神社は但馬国の一宮(国内で第一の地位を占めた神社)として、古くから一宮さんの呼び名でも親しまれているお社です。『古事記』『日本書紀』によれば第十一代垂仁天皇の御代、新羅(現在の朝鮮)の王子であった天日槍命が八種の神宝という鏡・剣・玉・比礼(呪力をもつとされる布)により構成される神宝を持って来日します。その後天日槍命は但馬国の開拓に励まれたため、その徳を敬慕して、八種の神宝がお祀りされました。これが出石神社の始まりとされています。平安時代に記された『延喜式』にも八座の神として明記され、当時特に霊験著しい神社に贈られた社格である名神大社にも列しています。
 
◎八種の神宝◎
 八種の神宝は新羅の天日槍命が日本にもたらした神宝で、伊豆志八前大神の御神名で出石神社にお祀りされています。八種とは『古事記』によれば珠二貫、振浪比礼、切浪比礼、振風比礼、切風比礼、奥津鏡、辺津鏡とされます。
 江戸時代の国学者である本居宣長によれば、これらの神宝は航海上重要な霊物として常に身辺に備えられていたもので、珠二貫は珠の多くを緒に貫いた二連のもの、振浪比礼は浪を起こし、切浪比礼は浪を静め、振風比礼は風を起こし、切風比礼は風を止めるもので奥津鏡、辺津鏡も航海に欠かせないものと説いています。
 したがって出石神社は航海安全の神さまとしても著名で、船旅の際は、出石神社で安全を祈願したのち船出することが古くからの慣わしとされています。
 
◎天日槍命◎
 出石神社に伊豆志八前大神とともにお祀りされているのが天日槍命です。
 天日槍命は新羅の王子でありましたが東方の国に聖皇の君がいると聞いて、その徳を慕って来日しました。そして未開であった但馬に入国し、岩山を開いて泥水を海中に放ち現在の但馬平野を開拓されました。また鉄の文化を日本に伝えたことでも知られています。やがて子孫は但馬のみならず播磨、大和、近江、遠くは筑紫方面まで進出して活躍し、よく知られるところでは仲哀天皇の后であり応神天皇の御母でもある神功皇后がその神裔にあたります。
 
◎小京都いずし◎
 出石神社の鎮座する豊岡市出石町は但馬の小京都と親しまれる城下町で国の重要伝統的建造物群保存地区にも指定されています。古くから観光客が絶えない出石の見どころをいくつかご紹介しましょう。

コウノトリ
 出石は国の特別天然記念物コウノトリの最後の生息地として知られています。コウノトリの郷公園では、その人口増殖と保護、野生復帰を進めており、解説員の案内に従ってコウノトリをご覧頂けます。

玄武洞公園
 百六十万年前の火山活動により造り出された神秘的な柱状節理で形成された玄武洞です。日本の地質百選にも選定されています。

出石皿そば
 出石皿そばは江戸時代に信州上田より伝来したそばで、町には四百件以上の店が軒を連ねます。伝統ある三たて(挽きたて・打ちたて・茄がきたて)製法で、その素朴なコシと風味が人気です。
 またもう一つの特徴は出石焼の小皿に盛り付けられていること。出石焼は透き通るような白を特徴とする白磁で、その歴史は古代にまで遡ります。柿谷陶石と呼ばれる純白の原料を使って焼かれており、その白さは他に例を見ません。その絹の様な風合いと繊細な彫刻が国の伝統的工芸品に指定されています。