第12回 古都京都の文化財(その一)
 
 千年の都・京。芸術・建築・工芸・祭り・景観・・・日本の伝統美が集うこの地には、毎日、国内外からたくさんの観光客が訪れています。この京都を中心に点在する社寺など、合計十七件もの物件が「古都京都の文化財」として世界遺産へ一括登録されたのは平成六年のこと。日本国内で最初の世界遺産登録でした。
 この世界遺産は多数の物件から成り立っていますので、まず、それぞれの名前を挙げてみましょう。

〈神社〉
 ・賀茂別雷神社(上賀茂神社)
 ・賀茂御祖神社(下鴨神社)
 ・宇治上神社

〈寺院〉
 ・教王護国寺(東寺)
 ・延暦寺  ・清水寺
 ・醍醐寺  ・仁和寺
 ・平等院  ・高山寺
 ・鹿苑寺(金閣寺)
 ・慈照寺(銀閣寺)
 ・龍安寺  ・西本願寺
 ・天龍寺  ・西芳寺(苔寺)

その他の建築〉
 ・二条城

 いかがですか? 皆さんも何箇所かは訪れたことがあるのではないでしょうか。

 京都の寺院建築の多くは応仁の乱(一四六七年)以降に建てられ、その後大きな災害を受けずに今も残されています。その文化的価値は明治以降全世界に知られ、先の戦争にあっても米国の中に「京都の素晴らしい文化財を破壊してはならない」という声が挙がり、空襲が行われなかったほどです。このため、京都の人が「先の戦」と呼ぶのは応仁の乱のことだ・・・・・・という笑い話もあります。

 京都の街を流れる賀茂川に沿って鎮座する
賀茂別雷神社賀茂御祖神社はそれぞれ、上賀茂神社・下鴨神社と親しまれています。五月に斎行される両社の例祭は「葵祭」と呼ばれ、源氏物語の昔から続くものです。
 上流の上賀茂神社、下流の下鴨神社はともに流造という形式の社殿です。どちらの神社も、朱の柱も鮮やかな廻廊や楼門の奥に質素な本殿があり、色彩の対比が我々の目を奪います。また、鎌倉時代の随筆『方丈記』の筆者、鴨長明は、この下鴨神社の神職の家系に生まれました。

 賀茂川の下流、宇治川近くに鎮座する
宇治上神社は、平安初期に編まれた『延喜式』神名帳にその名が見える古社です。この神社の本殿は年輪年代測定調査によって一〇六〇年頃に造営されたと推測され、現存最古の神社建築であることが裏付けられています。この三宇並んだ本殿は、保護のために設けられた覆屋の中にあります。また、本殿とともに国宝に指定されている拝殿は鎌倉初期の宇治離宮を移築したものと伝わり、寝殿造の趣を今に伝えます。

 次回は、市街地の寺院を中心にご紹介していきます。
 
 

「世界遺産」とは、1972年の国連教育科学文化機構(ユネスコ)総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(通称:世界遺産条約)に基づき、遺跡・景観・自然など、人類が共有すべき普遍的な価値を持つと認められたもののこと。世界各地に、現在700件を超える物件が登録されています。