第13回 古都京都の文化財(その二)
 
 京都の街には大寺院が立ち並び、その黒い瓦屋根が美しい景観を形作っています。今回は世界遺産のうち、洛中洛東(京都市街中心部)にある寺院をご紹介します。

 新幹線で京都駅に着くと、南側に巨大な五重塔がそびえています。これが
教王護国寺、通称・東寺です。建立は延喜十五年(796)で、桓武天皇の勅願によります。もともとは平安新京遷都に際し、旧都奈良の東大寺・西大寺にならって平安京の正門・羅城門の東西に寺が建てられたのですが、西寺は約二百年後に焼失、東寺だけが残りました。後に弘法大師空海に下賜され、真言宗の根本道場となりました。五重塔は高さが54.8メートルもあり、国内最大の木造五重塔です。人々から「弘法さん」と親しまれ、縁日には大勢の参拝で賑わいます。

 駅の北側、京都中心部へ足を向けると、浄土真宗本願寺派の総本山・
西本願寺があります。この寺は宗祖・親鸞上人を祀る祖廟を始まりとし、天正十九年(1519)に現在の京都駅前付近へ移転しました。建物の多くは国宝に指定されており、特に対面所・白書院・黒書院は、安土桃山から江戸初期にかけての書院造の様式を良く伝えています。全体としては、真宗独特の伽藍配置の典型を見せます。

 市街の右手に続くのは、東山三十六峰。この南端に、桜の名所として名高い
清水寺があります。平安初期の延暦十七年(798)、征夷大将軍に任じられた坂上田村麻呂が戦勝祈願のため、観世音菩薩を本尊として建立したと伝わる、京都有数の古刹です。崖に張り出して設けられた本堂前の掛け出し、「清水の舞台」は皆さんもよくご存知でしょう。このような建築技法を懸崖造といいます。清水の舞台からは、京都の中心部が一望できます。

 京都の寺院の代表格、金閣・銀閣も仲良く世界遺産に登録されています。
金閣寺は市街北西に位置し、正式には鹿苑寺といいます。金箔で装飾された三層宝形造のいわゆる金閣は舎利殿、すなわち釈迦の遺骨を安置する建物です。鹿苑寺は室町幕府の三代将軍・足利義満の別荘・北山殿を寺に改めたもので、金閣は極楽浄土の輝きを表現しているといわれます。池にせり出す金閣が水面に映る姿は格別です。

 
銀閣寺は正式には慈照寺といい、東山の北部に位置します。きらびやかな金閣に対し、こちらは黒木の二層造、ひと回り小さく質素な建物です。銀閣の名は金閣に対応させたもので、また、銀閣の前に銀砂灘と呼ばれる盛り砂があって、これに反射する月光に照らされた姿からくるともいわれます。こちらは室町八代将軍・足利義政の別荘・東山殿でした。金閣寺・銀閣寺はともに、臨済宗の寺院です。

 金閣寺より西は御室を経て嵐山、嵯峨野。裏手には北山といった風光明媚の地が続きます。次回はこの洛西と北山方面をご紹介します。

 
 

「世界遺産」とは、1972年の国連教育科学文化機構(ユネスコ)総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(通称:世界遺産条約)に基づき、遺跡・景観・自然など、人類が共有すべき普遍的な価値を持つと認められたもののこと。世界各地に、現在700件を超える物件が登録されています。