第16回 日本の世界遺産候補地

 
  日本国内には世界遺産が14件ありますが、それ以外に「候補地」と呼ばれるものがあります。これは各国で世界遺産にふさわしいと審査され、ユネスコへの推薦を検討している物件のことです。今回は我が国の候補地12件についてご紹介します。

 ●北海道・北関東の縄文遺跡群
 ●平泉の文化遺産
 ●富岡製糸場と絹産業遺産群
 ●国立西洋美術館・本館
 ●武家の古都・鎌倉
 ●富士山
 ●彦根城
 ●飛鳥・藤原の宮都と関連資産群
 ●宗像・沖ノ島と関連遺産群
 ●長崎の教会群とキリスト教関連遺産
 ●九州・山口の近代化産業遺産群
 ●小笠原諸島


 以上が国内候補地で、「小笠原諸島」のみが自然遺産、それ以外は文化遺産として推薦予定です。これらの候補地は各国政府からユネスコへ正式推薦されたのち、世界委員会による実地調査と審査が行われ、登録の可否が決定されます。

 東京都父島・硫黄島周辺の島嶼で構成される「小笠原諸島」は、その地理的条件から独自の進化を遂げた固有の生物が多数生息し、「東洋のガラパゴス」と称されるほどです。政府は今年1月に来年の世界委員会への推薦を正式に決定しています。

 日本人の誇り、「富士山」は文化遺産への登録を目指していますが、これは周辺のゴミ投棄問題などで自然遺産への登録が見送られたことが理由の一つです。日本の象徴ともいえる富士山。それが私達の手で汚されるのはあまりに忍びないことです。一人一人の努力で我が国の誇りを守り、世界へも誇れるものとしなければなりません。

 東京・上野の「国立西洋美術館・本館」はフランスが中心に進める「ル・コルビュジェの建築と都市計画」の世界遺産化計画に協調して候補地となりました。フランスの建築家、ル・コルビュジェの作品のうち22点を六カ国合同で登録するという、国の枠を越えたユニークな計画です。

 当宮と神輿を通じて交流の深い「平泉の文化遺産」(岩手県)は武家文化の最初の精華といえます。都から遠く離れた地に花開いた奥州藤原氏の栄華が偲ばれます。また、「宗像・沖ノ島と関連遺産群」(福岡県)は日本古来の信仰、神道を大きく取り上げることになる物件です。神社建築だけでなく、神道の歴史や思想がどのように評価されるかも注目したいところです。

 これらの世界遺産候補地ばかりでなく、我が国には世界に誇るべき史跡・名勝がたくさんあります。国民一人一人がその価値を認識し、未来の日本人への宝物としたいものです。
 
 

「世界遺産」とは、1972年の国連教育科学文化機構(ユネスコ)総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(通称:世界遺産条約)に基づき、遺跡・景観・自然など、人類が共有すべき普遍的な価値を持つと認められたもののこと。世界各地に、現在700件を超える物件が登録されています。