第17回 世界遺産とは?

 
 昨年開催された世界遺産委員会終了の時点で、全世界に890件の世界遺産が登録されています。そもそも世界遺産というのはどういうものなのでしょう? どんな意味を持ち、どんな手順で選ばれるのか、改めて紹介したいと思います。
 
1.世界遺産とは 
 国際教育科学文化機構(ユネスコ)は、教育・科学・文化面での国際協力を促進し、相互理解を深めることで平和の基礎を作ることを目的としています。その目的の表れのひとつが「世界遺産」。遺跡・景観・自然など、「人類が共有すべき顕著な普遍的価値をもつ不動産」と定義されています。
 世界遺産は文化遺産・自然遺産に分けられます。前者は遺跡・建造物などの、人の手になるもの。後者は地形・景観・生態系といった地球そのものが育んだものと言えるでしょう。また、両者の特長を併せ持つ複合遺産もあります。
 
2.候補地の選定
 世界各国にはそれぞれが誇りとする遺跡や自然があります。そのうちから、「これは世界に誇れるもの、世界遺産にふさわしいものである」と国内で審査され、ユネスコへの推薦を検討している物件が「候補地」です。これらの候補地は精査を重ね、各国政府からユネスコへ正式推薦、または暫定地リストを提出します。
 
3.現地調査と審査 
 各国から候補地の推薦を受けると、現地調査と審査が行われます。現地調査では候補地の保存状況や周辺の環境などが調べられ、世界遺産センターが登録推薦を判定。これを踏まえて世界遺産委員会による最終審査が行われますが、文化遺産は6つ、自然遺産は4つの登録基準が設けられ、このいずれかを満たすことが登録の条件になります。精査された候補地は、こうして世界遺産へ登録されます。

遺産登録を審査するイコモスの現地調査(平泉中尊寺にて)

 
 世界遺産には、エジプトの「ギザーのピラミッド」や中国の「万里の長城」のような皆さんもよくご存知の史跡・名勝ばかりでなく、日本の石見銀山やフランスの王立製塩所など、登録されなければ世界に知られることがなかったであろう物件もあります。このような新しい発見があるのも楽しいものです。

 前回までで、日本の世界遺産はぐるりとめぐり終えました。今後は世界各地の有名な登録物件をまわり、皆さんと世界一周の旅をしたいと思います。
 

「世界遺産」とは、1972年の国連教育科学文化機構(ユネスコ)総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(通称:世界遺産条約)に基づき、遺跡・景観・自然など、人類が共有すべき普遍的な価値を持つと認められたもののこと。世界各地に、現在700件を超える物件が登録されています。