第3回 日本の自然遺産〜屋久島・白神山地・知床〜
 
私たちのふるさと・日本列島は、世界でも稀なほどに自然の恵み豊かな土地柄です。そんな我が国では現在、三件の自然遺産が登録されています。指定地域にはどのような自然が息づいているのでしょうか?
屋久島(鹿児島県)
屋久島は、本州・北海道・九州・四国を除き、日本で九番目に大きな島です。その屋久島といえば、屋久杉。島の標高五百メートル以上の山地に自生する杉のうち、樹齢千年以上のものが特にこう呼ばれます。中でも樹齢四千年と推定される巨木があり、縄文杉として知られています。
この他にも、宮之浦岳を囲む鬱蒼とした樹林には、ヤクシカやヤクシマザルなどの固有種をはじめ、多くの動物が生息し、また、日本最南端の高層湿原や最北端のガジュマル林など、亜熱帯から冷温帯までの幅広い植生が見られます。この自然が育まれたのは、豊かな雨量のおかげ。この島は年間四千ミリという国内有数の降水量があるのです。
白神山地(青森県・秋田県)
白神山地は、世界最北限のブナ群生地です。ブナは親しみある樹木の一つ。白神山地ではこのブナが生い茂る広大な森が見られます。地質調査によると、この地域はなんと一万年前からブナが生え始め、八千年前にはすでに樹林が形成されていたと考えられています。現在では十三万ヘクタール(内、世界遺産指定地域は一万七千ヘクタール)にも及び、欧州では開発などで消えてしまったブナ原生林の姿が留められている場所なのです。
もちろんこの森は、たくさんの小動物の住処でもあります。特に絶滅が危惧される天然記念物のクマゲラ(キツツキの一種)、カモシカ、ニホンザル、ツキノワグマ、ヤマネなどが観察されています。
知床(北海道)
「知床の岬にハマナスが咲くころ」という歌でも良く知られる北海道・知床は、海岸部・火山帯・湿地・湖沼と、多岐に渡る自然が観察できる非常に珍しい土地です。これらの地理的条件から、川辺の生物と海辺の生物、双方による食物連鎖系が見られます。このため、世界遺産の指定地域が知床半島の陸地部分とその沖合約三キロの海上にまたがっているのも特徴です。
知床はしかし、生活の場でもあります。豊富な水産資源のために、指定地域には昔から多くの漁業関係者が住んでいるのです。世界遺産指定を受けて知床の沿岸漁業はより厳しく制限され、人々の生活に影響を与えているのも事実です。前述の二つの自然遺産でも、観光や開発による問題が残されています。これらの問題が解決され、世界に誇れる素晴らしい自然が末長く保たれることを願います。
 

「世界遺産」とは、1972年の国連教育科学文化機構(ユネスコ)総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(通称:世界遺産条約)に基づき、遺跡・景観・自然など、人類が共有すべき普遍的な価値を持つと認められたもののこと。世界各地に、現在700件を超える物件が登録されています。