〜 信仰を訪ねて 〜 |
沖縄の信仰B 久高島とイザイホー |
国や村の祭りを執り行う公的巫女「ノロ」、それに対して人々の日常生活を助ける民間巫女「ユタ」。姉妹が兄弟を守る特殊な霊力、「オナリ神」。 これまでこのコーナーで取り上げたこれら沖縄の信仰を振り返ると、女性が非常に活躍していることがわかります。これは女性が男性に比べ高い霊力を備えていると考えられているからであり、またこの霊力のことを「セジ」と呼ぶとお話しました。 そしてこのセジを受け継ぐ祭り、それが「神の島」久高島で12年に一度しか行われない奇祭、イザイホーなのです。 ●神の降り立つ島 今回の舞台久高島を、まずは簡単にご紹介しましょう。 久高島は、沖縄本島南部の知念半島より東約6kmに位置する、一周約8kmの小さな島です。南北に細長いこの島の北側は、神の領域と考えられ、人々は人間の領域である南側に集落を形成しています。島の最北端は、かって琉球の祖神アマミキヨが降り立った場所。琉球の始まりであり、五穀の初めてもたらされたこの島は、歴代の琉球王が毎年危険を冒してまで訪れた最高の聖地です。その神聖さは失われることなく、現代でも年間20数回の島単位の祭祀が行われています。 イザイホーは、その中でも特に異彩を放つ、そして最も重要な祭りなのです。 ●神女(しんじょ)への儀式 イザイホーとはひと言で言えば、成巫式(せいふしき)。つまり神女(巫女)となるための儀式です。 その対象となるのは久高島で生まれ育った30歳から41歳までの女性で、彼女たちは儀礼の中で祖母の霊力(セジ)を受け継ぎ、ナンチュと呼ばれる神女へと生まれ変わります。ちなみにこのセジの受け継ぎは、具体的には香炉の灰の移し入れや、秘密の名前の継承などの方法で行なわれます。 そうしてナンチュとなった女性たちは、男兄弟を守護するオナリ神、また家や村の繁栄と安全を願う神女として、神に祈り仕えます。と同時に、男性たちに尊崇される存在となるのです。 ●奇祭のゆくえ このイザイホーは、その祭祀の仕方も特色に溢れています。 まず祭りが行われるのは、12年に一度の午の年。旧暦11月の満月の日から4日間が、神事の中心。神事に参加できるのは、前述した条件に加え、島出身の男性に嫁いだ者のみ。再婚も許されません。 そして「七つ橋」という、この世と神々の世界を結ぶ橋を7回渡ることから、神事は始まります。神女に適さない女性は、橋から落ちて死んでしまうとのこと。さらに家籠りや朱塗りなど、数々の神事が行われ、神女たちの歌舞で祭りは締め括られます。 珍しくも神聖なこの祭り、今後も続くことが望まれますが、現状は厳しい様子です。時代風潮の変化に加え、参加条件の厳しさがその原因となっています。そのため昭和53年の8名を最後に、平成2年、平成14年ともに行われておりません。 神の島、久高島。イザイホーの存続は難しくとも、その祈りの精神は永く伝えられることを願います。 |